インプラントのトラブル事例

ここ10年でインプラント治療を実施する歯科医院が増加したこともあり、インプラント治療を受ける患者の数も年々増加傾向にあります。インプラントに大変大きな満足感を得ている方が増えているのと同時に、インプラントによるトラブルを訴える方も増えていることも事実です。

主なインプラントのトラブルとしては、
上顎の場合だと『骨を貫通して上顎洞まで達する』、ひどい場合には上顎洞にインプラントが落ちるケースもあるようです。上顎洞とは上顎の上にある頭蓋骨の空洞部分です。
下顎の場合には『動脈を傷つける』『神経を傷つける』というケースがありますが、実際に死亡事例もあります。

インプラント治療は歯科医に豊富な知識や高い技術、充実した設備が求められます。歯科医なら誰でも最低限持っている知識や技術という訳ではなく、歯科医個人での習得が必要です。なぜならほとんどの大学で、歯科学生に対してインプラントに関する多少の講義はされても、実習まではしてこなかったからです。

インプラントには広範囲にわたる専門知識が不可欠ですが、大学でしっかりしたインプラント教育をしてこなかったという現実の中で、中には解剖学や歯周病、かみ合わせなどを、基礎から総合的に学ぶことなくインプラント治療を始める歯科医もいます。トータルで考えたトレーニングを受けていないことが、いろいろな問題が起きる原因になっているのです。それを顕著に表わしているのが、一回5時間のメーカーによる講習会への参加のみでインプラントを始める歯科医もいるという憂慮すべき問題です。インプラントは保険適用外の自由診療ですから、監督官庁である厚生労働省からの強制的な指導ができません。また、同様の理由で標準的な治療方法も定められていないのが現状です。

このような現状を踏まえ、一部の大学では授業を新設し、治療の技術とモラルを向上させる取り組みを始めたり、インプラント治療に関わる5つの学会が安全な治療のためのルール作りに取りかかったりという動きも出ています。また厚生労働省でも平成25年3月に歯科インプラント治療指針が発表されています。

インプラント治療を受けた歯科医師に技術不足や知識不足があると、再治療は免れません。
そうならないめに、日本口腔インプラント学会では、多岐にわたる申請資格を取得した後、試験に合格した歯科医を『専門医』として認定しています。ですがその数は国内ではまだ約700人と少ないのが現状です。更に厳しい条件をクリアした『指導医』を認定しています。この他にも『日本顎顔面インプラント学会』『国際口腔インプラント学会』『ICOI』『日本先進インプラント医療学会』などの各インプラント学会において認定医や指導医の認定が行われています。

インプラントによるトラブルを避けるためには、歯科医選びが重要となってきます。